課題の概要
研究開発体制
研究開発課題リーダー
寺師弘二(東京大学 素粒子物理国際研究センター 准教授)
参画機関(大学等)
東京大学、慶應義塾大学、理化学研究所、沖縄科学技術大学院大学、シカゴ大学
参画機関(企業等)
SCSK株式会社、日鉄ソリューションズ株式会社、International Business Machines Corporation、blueqat株式会社、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、qBraid株式会社、株式会社博報堂DYホールディングス、三井化学株式会社
本課題の特徴
- 少量データ・少数パラメータでの量子機械学習の性能、実データでの評価に優位性
- 量子レザバー手法による画像認識、素粒子実験データでの分類、量子GANによるデータ分類
- 量子データ入力による量子機械学習→古典機械学習に対する優位性の確立
- 学習と推論を異なる量子デバイスで実行可能にするモデル→汎用性の向上
- 社会実装の加速
本課題の目的
- 高い汎化性を持つ量子機械学習モデルを効率的に実装できる量子コンピュータモデルの提案
- 素粒子実験や多体問題量子シミュレーションへの応用による性能評価
- 量子埋め込みによるデータ出力を使った量子機械学習モデルの開発
- 50量子ビット以上の量子コンピュータでの性能評価と優位性の数値的検証
成果
勾配消失問題の回避
- 古典データを入力とする量子機械学習では、勾配消失問題が起きることがあります。
- 勾配消失を避けるための必要条件が求められました。
- 量子データを入力とする量子機械学習では、物理系の波動関数を直接入力して学習し、物理的性質を予測する学習モデルを実装しています。
- 場の量子論のシミュレーションデータへの応用は初めて取り組まれたものであり、時間発展状態や多粒子生成状態などの非自明な状態に対しても学習が可能であることが確認されました。
量子エクストリームリザバー計算モデル
- 2次元空間上の分類問題を生成し、量子エクストリームリザバー計算モデルの性能を調べ、その安定性を検証しました。
量子機械学習における過学習
- 量子コンピュータはこれまでのコンピュータよりも効果的に機械学習を実施できる可能性があります。
- サロゲートモデル生成手法と、過学習問題とその回避法に対する一般手法の開発をしています。
- 量子系では、エンタングルゲートをランダムに削除する事で量子回路の表現力を低下させ、古典系と同様のドロップアウトを導入する事が可能です。
- このドロップアウトを活用する事で、オーバーフィッティングが抑制される事が示されました。
古典情報のための量子回路
- 任意の量子状態を、有限個の1量子ゲートと2量子ゲートを持つ最適量子回路に符号化する、量子-古典ハイブリッドアルゴリズムを提案しました。
- 数値シミュレーションにより、スピン1/2の反強磁性ハイゼンベルグ模型やスピン1/2のXY模型を含む量子多体系の基底状態を符号化するアルゴリズムを実証しました。
- このアルゴリズムにより、画像等の古典情報を量子状態へ符号化した場合も最適な量子回路を構成する事が可能となります。
- 古典データの機械学習を量子コンピュータ上で処理するためにこのアルゴリズムは有効である可能性があります。
今後の展望
- 量子機械学習の汎化性・応用範囲に対する理解
- 新しい計算タスクへの応用
- 勾配消失にロバストな手法の検討(対称性・過剰パラメータの導入など)
- 古典データの効率的な量子回路への符号化
- テンソルネットワークなど量子埋め込み手法の機械学習への応用
- 量子データ学習での汎化性・優位性の評価手法
- 物性値予測を行う量子生成モデルの性能評価
- 場の量子論シミュレーション入力での汎化誤差評価・古典計算(秩序変数の測定)との比較
- 量子シミュレーション・量子計測デバイスと量子計算機のインターフェース
- 量子状態変換プロトコル(量子トランスダクション)の予備研究・量子コンピュータ応用の調査