課題の概要

研究開発体制

研究開発課題リーダー

田中 宗(慶應義塾大学理工学部物理情報工学科准教授)

参画機関(大学等)

東京大学、慶應義塾大学、理化学研究所、沖縄科学技術大学院大学

参画機関(企業等)

Amoeba Energy株式会社、株式会社TIER IV、International Business Machines Corporation、株式会社バイトルヒクマ、BIPROGY株式会社、村田機械株式会社、株式会社オレンジテクラボ

本課題の特徴

  • 量子回路最適化アルゴリズム
  • 量子アニーリング/イジングマシンと機械学習の融合
  • 実装量子コンピュータの制御信号最適化
  • 最適化問題の分割
  • 統計力学的解析

本課題の目的

  • 汎用量子回路最適化
  • 機械学習融合最適化

K. Kitai et al., Phys. Rev. Research 2, 013319 (2020).

成果

量子コンパイル技術ISAAQ

  • ゲート型・量子アニーリングマシン・イジングマシンなどの最適化技術のハードウェア、ソフトウェア、 アプリケーションの研究開発に関する現状の整理を実施。
  • 量子回路最適化技術のプロトタイプとして、ISing mAchine Assisted Quantum compiler (ISAAQ) を開発。
  • ISAAQは、Qiskitとtketで利用できる発見的手法、および既存のQUBO手法よりも優位(より少ない物理 CNOTゲートで済む)。

量子最適化技術を用いたハイブリッド計算手法の開発

  • イジングマシンと機械学習、シミュレータの3種類の計算からなるハイブリッド計算手法に基づくブラックボックス最適化 。
  • Factorization Machine with Annealing (FMA) と呼ばれる計算手法に対し、その適用範囲の拡大に向けた初期検討を実施 。

量子回路最適化ソフトウェアAQCEL

  • 量子回路最適化ソフトウェアAQCELを素粒子物理学に応用し最適化性能の理解を進めました。
  • AQCELをクォークのハドロン形成過程のシミュレーションに適用し、回路の深さごとにCNOTゲートの削減を調査した。定性的には深い回路ほど削減率が低くなると予想されたものの、実験範囲ではそのような性能低下は見られませんでした。
  • 頻出するゲートパターンの最適化手法を開発するために、実際のアプリケーション回路でのゲートパターンの抽出を行いました。

量子オットー熱エンジンの最適化

  • 実験により実現される量子シミュレータの最適化技術に関する研究
  • 量子オットー熱エンジンは、極低温気体で作業媒体を相互作用させ、トラップ周波数と同時に相互作用を駆動。
  • 研究の結果、相互作用によってエンジンの性能を向上させる事が可能であることがわかりました。
  • 有限時間の非断熱エンジンサイクルにおいても、出力と効率のトレードオフを定量化しました。

今後の展望

  • 最適化問題の数理構造に適合するゲート型量子コンピュータ・量子アニーリングマシン・イジングマシンなどのアルゴリズム構築を実施します。
  • イジングマシンと機械学習のハイブリッド計算によるブラックボックス最適化手法の構築を継続し、当該手法の適用範囲の拡大を実施します。
  • 量子回路最適化アルゴリズムの効果を詳細な調査を元に、性能向上と応用範囲の拡大を行います。
  • NP困難問題の解空間の構造解析により適切なアルゴリズムの設計指針を模索します。

社会実装に向けた取り組み

  • 現有シーズをもとに、研究体制内外の数社の企業と会話を継続し、共同研究開発につなげます。
  • 現有シーズの例
    • イジングマシンと機械学習のハイブリッド計算によるブラックボックス最適化手法(製造業)
    • 物理・化学シミュレーション(材料業)
    • イジングマシンとデジタルコンピュータのハイブリッド計算による経路最適化手法(建設業、配送業)